東邦大学の習志野キャンパス。
理学部で2千人、全体では4千人超が通う
東邦大学
副学長・理学部長 古田 寿昭 氏
東邦大学は医学部や看護学部を擁する自然・生命科学の総合大学。理学部ではウィズ・コロナ下の安全な学習環境を整えるべく、新しい換気システムの設置を機に、CO2濃度の見える化を実現しています。デモ機による換気の検証が導入の決め手になったというそのワケは? 古田寿昭副学長・理学部長にうかがいました。
最初から導入するつもりだったわけではありません。あくまで、試した結果次第で採用を判断するつもりでした。
昨年、理学部に新しい換気システムを入れたのですが、スペック通りの効果を発揮するか確かめるため、CO2の濃度測定をすることに。そこで各社のCO2測定ソリューションを調べて比較し、デモ機をお借りして実地検証を始めました。
検証作業を進めてみて、すぐにわかりました。知りたいのは、CO2濃度の絶対値ではなく、数値のリアルタイムな動きだということが。
たとえば講義中のCO2濃度の推移です。学生たちが入室するとCO2濃度は上昇し、1コマ90分の講義のどこかでピークを迎えてその後は定常状態を保ち、講義終了で下降に転じます。この上下変動が1時間毎、30分毎といった粗い測定間隔では掴めない。では、間隔が1分毎ならどうか。ほぼリアルタイムなCO2濃度の動きを追えるので、換気が効いている、効きが落ちているなどを確実に把握できます。さらに、入室者の数、窓の開閉等による換気効果の違いも見て取れるようになりました。
こうした実地検証を踏まえた結論が、旭化成のソリューションの導入でした。換気の効果を1分毎にリアルタイムで把握できるうえ、集中管理もしやすい。換気スイッチの入れ忘れなどもすぐ見つかりました。否定的な声は上がらず、むしろCO2濃度を数値で見たい、知りたいという教員がほとんどで導入には非常に好意的でした。
導入し運用するなかで発見した事柄もあります。換気システムを備えているからと過信してはいけない、というのはその1つ。安全な数値内だったものの、入試会場になった講義室が、講義の際のCO2濃度を大幅に上回ったことがあります。CO2濃度の変動を見える化していたからこそ、こうした“想定外”に気づけましたし速く対処できました。余談ながら、ある入試では数学科目のときにCO2濃度が急上昇。超難問だったので脳をすごく働かせたためか、など推論が飛び交いましたね。
学校側は安全な環境をお膳立てしていく。それだけでなく、学生には自主的に窓やドアを開けるといった行動様式を身につけてほしい。このためにはCO2濃度にまず関心を持ってもらうこと。その場のCO2濃度が即座にわかるスマートフォンアプリの活用を勧めるなどもしています。
全てを遠隔授業にすれば、もちろん学内にクラスターは発生しません。座学ならリモートのほうが効果が上がるケースもあります。とはいえ、自然・生命科学ならではの実験、実習などは対面ゆえの体験が得られる場です。学びの機会の減少はなんとか工夫を重ねて食い止めたい。
今は確実な換気を最優先していますが、アフター・コロナの時代が訪れても学習環境の快適化を継続しなければと思っています。室温、湿度、さらにCO2濃度もまた、学生たちのパフォーマンス向上に影響するはずです。